2002/04/05

妖魔の騎士

部屋に、どこからか小さい蜘蛛(くも)が忍び込んでいて、不意に目の前に降りてくる事があります。ほんと、たまにだけど。
蜘蛛、小さいくても結構苦手ですが、できる限り我慢して捕まえて窓から出してやります。ある小説を思い出しながら。
あ、太宰治ではありませぬ。

フィリス・アイゼンシュタイン著「妖魔の騎士」。僕の大好きな作品のひとつ。
舞台は剣と魔法の世界である地上と亜空間的な妖魔の世界。
金属と妖魔を操る魔術師“レジーク”が、繊維と樹木を操る女魔術師“デリヴェブ”に求婚し、断られる事から物語は始まります。
レジークはデリヴェブに対して逆恨みともとれるゆがんだ感情を抱き、いつか彼女をおそれるようになります。そしてついに彼女に対抗するために“金属を織物のように編んだ防具”を作ろうと考えつきます。自分の分野に敵の属性を加える、対抗呪文です。
しかし、デリヴェブは繊維の魔法を使うため、レジークが不用意にそんな物を作り始めたところでそれはすぐに彼女に感知され、しかも宣戦布告と受け取られてしまうのです。
それでもレジークはとてつもない手段に訴え、彼女の魔力を一時的に弱め、その間にまんまと魔法を完成させさせてしまいます。

と、こんな感じのお話。どんどん書いちゃいそうなのでやめときますが。
上に出てきてませんが主人公クレイの悲壮な冒険、レジークに仕え、可憐な少女から騎士の姿にもなれる妖魔ギルドラムの苦悩。雰囲気や世界観をじっくり楽しめる作品だと思います。

そうそう、やっと話を戻すのですが、“繊維と樹木の魔法”を操るクレイは、無数の蜘蛛を使い魔として服の間などに住まわせているのです。
前半、クレイが蜘蛛たちの力を借りて旅を続けるシーンがあるんですが、その魔法ともいえぬ魔法の描写がとてもいいんだよね。読み終わったら、まわりにちっちゃい蜘蛛いないか探しちゃうかもしれません。
なんかとってもいい生き物に見えて来ること請け合いです。

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