2008/05/04

乙一『きみにしか聞こえない』


乙一氏作『きみにしか聞こえない - Callinng You』読了。
表題作のほか、『傷-KIZ/KIDS-』『華歌』の2編が収録されていました。

『Callinng You』は人付き合いが苦手な女子高生が主人公の、切ない、恋愛未満といった感じのストーリーでした。
頭の中でつくりあげた想像上の携帯電話が、同じように寂しさを紛らわせようと携帯電話を想像していた男の子とつながってしまうというちょっと変わった始まりで、その空想上の電話を使って段々と打ち解けていく様子が瑞々しく描かれています。
クライマックスのシーンはあいかわらずうなってしまうような盛り上がりです。若い女の子が読んだらかなりの割合で泣くんじゃあないだろうか。多分。

『傷』は養護学級にいる少年二人組みのお話。
一人は手のつけられない乱暴者で、彼の視点で物語が進んでいきます。もう一人はおとなしくてやさしい少年で、「怪我を他人から自分の体に移動させる、または自分から他人に移動させる」というスタンド能力を持っています。
変わった力を見つけた二人が、お互いの境遇に苦しみながらも楽しく遊びまわるのですが、その楽しい描写が後半の絶望的な状況のなかで思い出されて胸がいたむようです。
なんなんだこの泣かせ芸的文章。シンプルなストーリー運びなんだけどいつもながら巧いなと思います。

『きみにしか…』と『傷』は両方とも映画化されているみたいです。ショートストーリーを原作にするとどんな感じになるのだろう?機会があったら見てみたいな。

『華歌』は事故で恋人を失った主人公が、病院で過ごす姿を描いた作品です。
人の顔を持つ歌う花が出てくるんだけど、読んでいてなんだか気持ち悪く思えるほどなまなましい描写でした。恐怖モノではないんだけど、ホラーっぽい。ストーリー上、その花は悪いものではなくて、登場人物たちがその花によって段々と救われていくという内容なんですけどね。
始めは薄暗い雰囲気の病室とその患者たち、という感じで鬱なのですが、段々と明るくなっていく様子は結構楽しく読めました。


短編集はなんだか読みやすい。読書メモの方が追いつかないや。